思いつきチェック、「同性愛R指定」〜「同級生 Get Real」
NTTドコモ・キッズi-modeプラスの「同性愛サイト・アクセス制限」の問題で、「子どもを同性愛の知識・情報から隔離する」とはどういうことか、と考えた。
考えてもなにも思いつかなかったが、ふと、映画のレイティングはどうなっているのかな、と思いいたった。
昨年、アメリカでR指定を受けた「ブロークバック・マウンテン」が、日本ではPG-12(12歳未満の鑑賞は成人保護者の同伴が必要)になったことが、快挙のように言われた*1。当時アメリカでは公開上の攻防があり、そうした緊張を反映したニュースだったと思う。その裏には、「同性愛映画を公式に認めるか?」というQ&Aがあった。
18禁的エロや刺激的表現のない同性愛映画は、どのようにレイティングされるのだろうか?
もちろん、実際に国ごとになにをどういう基準でレイティングしているのかなんて、僕は知らない。検閲・自主規制問題なんて、真面目に考え出すとドツボにはまること必至である。だから以下は適当な、(かなりふざけた)メモである。
ザ・悪の帝国
世界で反同性愛的国家というと、イランの次はアメリカである。
ためしに、いくつかの有名どころの映画のレイティングを、チェックしてみる。
アメリカの「映倫」はMPAA(The Motion Picture Association of America)。
レイティングはIMDbでチェックできる。ようするに、以下はIMDbをちゃちゃっと検索しただけのシロモノである。
アメリカの映倫自主規制は、暴力表現、暴力的な言葉、ドラッグ、未成年のセックスなどいろいろ厳しく細かい感じである。はやい話、一発殴って「ファック!」と怒鳴れば自動的に
Rated R
になりそうだ。だからそれぞれの映画のレイティングも、即同性愛への検閲を反映したというわけではない。
「ブロークバック・マウンテン」のR指定の理由は、
「sexuality, nudity, language and some violence」
である。
マッパはまずかったということだ。「ファック!」もまずかった。イニスがジャックを殴ったのもまずかった。セクシュアリティというのは、きっとイニスの奥さんとの後背位に違いない。
ともあれ、他の映画を見てみよう。
古典で、もちろん傑作である。この映画で僕はハーヴェイ・ファイアステインのファンになった。彼が出ているなら瞬殺されるだけの「インディペンデンス・デイ」まで観たぐらいである。
さて、レイティングは―
Rated R
IMDbではR指定の理由までは分からない。ご存知のようにセックスシーンはないが、アーノルド姐さんのドラアグとオネエが強烈過ぎたに違いない。「食って吐く」ダイエットも少女たちに悪影響があると思われる。
次,定番に行こうー
モーリス(1987) - goo 映画
女性にばかり評判になった印象があるが、自身のセクシュアリティと正面衝突で向き合うモーリスの軌跡が僕は好きである。愚直なまでのゲイ映画だ。性的描写もヘテロなら普通の恋愛映画ていどだ。レイティングー
Rated R
これもR指定理由の記録は残っていない。なにが悪かったのか、正直分からない。テーマが暗過ぎたのか。同性愛=刑法問題だもんな。
原題「The Incredibly True Adventure of Two Girls in Love」。僕が見た数少ないレズビアン映画だが、とてもかわいい、10代のレズビアン少女たちに元気を与えそうな初恋映画である。
Rated R
理由「a strong sex scene involving teen girls, and for language and some drug use」
ラブシーンがたたった。10代はスクリーンでセックスしてはいけないのだ。ドラッグは、確かに言い訳できない。
恋愛がガチンコで出てくる映画を取り上げるのがマズいのだ。どうしてもセックスが絡んでくる。
政治的映画にしよう。ヒューマン・コメディである。
メルシィ!人生(2000) - goo 映画
原題「Le Placard」。「ゲイ映画」だがゲイもゲイセックスも出てこない。会社員がゲイという噂を立てられたら周囲はどう反応するか?という、ホモフォビアを嗤った風刺的映画である。
Rated R
R指定理由「a scene of sexuality」
「品質検査」*2のせいだ。ピニョン氏と女課長が大声上げながらセックスしたのが悪いのだ。断じて同性愛ではない。
カミングアウト映画である。セックス的絡みはキスシーンのみだ。
Rated PG-13
理由「sexual content and some strong language」
R指定は逃れた。「sexual content」はなんだ。ダッチワイフ人形か。
ヤケになってきた。じゃあこれはどうだ。
リトル・ダンサー(2000) - goo 映画
原題「Billy Eliot」。3月23日のエントリでレビューしたが、ゲイでトランスヴェスタイトのマイケル君が脇役でいい味を出している。主人公11歳の少年で、スポ魂・家族愛映画だ。同年輩の子どもが観れなければ意味がない気もする。
Rated PG-13
理由「for some thematic material. (edited version)」
テーマ的要素か。きっと労働組合のことだな。あるいはストライキだな。サッチャリズムだな。新自由主義だな。
以上の映画のほとんどは、フランスでは「U(全年齢)」である。
イヤミ先生になりそうな僕を誰か止めてくれ。
国際比較〜「Get Real」
「未成年に見せてよい、むしろ観た方がよい同性愛映画」はあるか?
ゲイムービーは概して刺激的だ。でも、(小学生はともかく)中学生・高校生のゲイが、あまり濃くはない、元気が出るような映画を観る。そういう機会があってもいい。
そこで思いついたのが、「さわやか青春ゲイ映画」、「Get Real」(邦題「同級生」)だ。
16歳のゲイのスティーブンは、ハッテントイレに通うぐらいにゲイとしての欲望とは折り合っているが、恋人がいたことはない。その彼が、ついに初めての恋愛をする。陸上部スター、ジョン、美人のガールフレンドがいてノンケっぽかった彼が、実はゲイだった。
初めての恋に没頭する2人だが、しかし、2人がゲイとしてどう生きていくかという姿勢の違いが、次第に2人のあいだに溝を作っていく。恋愛に傷ついたスティーブンは、自分を一切隠さず生きる、公のカミングアウトという道を選んでいく―
という、いささかベタすぎる「ゲイ成長物語」だ。ベタだが、それこそ高校生の時に見たかったなという真面目さ直球さがあって、いい映画である。「中学生日記」的、教科書的ゲイ映画といっていい。
数々のライターが賞賛レビューを書いている。
AllAbout同性愛ー上映中、「同級生」、もう見た?(※注意:アダルトコンテンツ有サイト)
ではこの映画のレイティングは―
Rated R
R指定理由「language and sexual content(言葉と性的な内容)」。
まただ。
もうアメリカ映倫がなにをやろうと驚かない。
しかし、実際的な問題として、恋もしたいしセックスもしたい高校生のゲイが、この映画を保護者と一緒に観たがるだろうか?こうなると、もはや、無意味なレイティングという気がするのだ。
じゃあ、今度は他の国でこの映画がどうレイティングされているか。これもIMDbで分かる。
各国のレイティング・システムについては、こちら。
国 | レイティング記号 | レイティング |
---|---|---|
アイスランド | L | 全年齢 |
アルゼンチン | 13 | 13歳以上にふさわしい |
オーストラリア | M | 成熟した(Mature)視聴者にふさわしい |
チリ | 14 | 14歳以下の子どもには不適切 |
フランス | U | 全年齢 |
ニュージーランド | M | 16歳以上にふさわしい |
スウェーデン | 7 | 7歳未満は18歳以上の成人同伴 |
UK | 15 | 15歳未満お断り |
ドイツ | 12 | 12歳以上にふさわしい |
アイスランド、フランス、スウェーデンが全年齢、実質的全年齢に近いが、他の国はなんかかんかと中学生以上・高校生以上のしばりをかけている。アメリカよりはましだ、という感じだか。
じゃあ、日本は?
「Get Real」の日本での配給はアスミック・エースである。
同級生・公式サイト
IMDbに日本でのレイティングの記録はない。公式サイトにも、Wikipediaの日本でPG−12またはR指定を受けた映画一覧にも登場しない。
日本での公開は2001年だから、指定を受けていれば上記リスト(1998年以降)に入っているはずである。日本ばんざい。
じゃあこの映画、日本ではどんなふうに売られていたのか、ふと気になった。
Amazon.co.jpのDVD情報を見てみた。
16歳のスティーブンは、同級生のジョンに恋をした。美人のGFがいる彼ゆえ、それは片思い。しかし、ジョンはスティーブンの素直で一途な気持ちに傾いていき、ふたりは急接近する*3という、ゲイの高校生の恋物語を爽やかに描いた英国映画。
手をつないで歩きたいスティーブンと、ふたりの関係を隠したいジョンの心のすれ違い、ゲイであることに理解をしめす女友だちとの友情、カミングアウトするか否かで悩む心…など、主人公の心がゲイであることを恥としないので、同性愛を描いても、トーンは明るくユーモラスで好感度大。美少年の耽美映画になりがちなテーマだけれど、それをサラリと爽やかに描き、ひとりの少年の成長物語としたサイモン・シュア監督の手腕が見事。主演のベン・シルヴァーストンも繊細かつユーモアのセンスがありチャーミング。(斎藤 香)
Amazon.co.jp―『同級生』―商品の説明
ぜんぜんオチになっていないが、終わる。