「家族の食卓」


漫画家へいたろう、平井太朗さんのブログ漫画「家族の食卓」


へいたろうさん、言わずと知れたゲイコミックライターである。
数年前、ウェブコミック投稿サイト「コミック・アジト」にアップされた彼の作品を読み、すっかりへいたろうさんのファンになった。
いま、「アジト」では白黒だった漫画をカラー化し、1ページずつ上記のご自分のブログに連載している。


先生(?)の仕事がお忙しいのか、しばらくアップはかなりゆっくりだった。最近になってアップが速くなってるかなと思っていたら、ほぼ定期週刊になっていたらしい。慌ててチェックする。


「ほのぼの系」である。ギャグ漫画的なかわいいキャラクターが好きかどうかで好みは分かれるが、僕は好きだ。エロなし(シモネタあり)ほのぼのギャグゲイコミック、これがいい。


「35歳はじめて物語」は、35歳で自分がゲイだと気づいた章輔のデビュー物語。なにもかも新鮮で新しい(笑)。
35歳で自覚ってほんとにこんなもんなの?とも思うが(だいたい章輔は僕よりずっと幼く見えるぞ*1)、ゲイ友、同僚、上司、家族がドタバタ入り乱れる(やおい漫画家・咲場尻子(さきば・しりこ)なんてのもいる)ゲイ小ネタ集はただおかしい。


章輔と二丁目の雇われママ・剛のつかず離れず、まったりな関係がいい。
「アラ、いい男(めりめりめり‥‥ ←フライパンをぞうきん絞りする音)」
なんてベタなネタが、僕は大好きである。


家出して二丁目にやってきたMtFの高校生に剛がかける言葉には、思わず涙腺が緩みかける。「誰でもいいからそばにいて欲しかった‥‥!」と叫ぶそのコに剛が言ったナイスツッコミには、もっと笑ったが(笑)。


この章輔・剛コンビがカメオ出演している「家族の食卓」は、コメディはコメディだが、打って変わって暗い、つらい、重い。はじめは軽かったが、このところすごい勢いで重くなっている。


嗣雄はほんとうに優しいと思う。いろいろ事情は違うが、僕は自分の親にあんなに気を使えない。


母親には絶対に言えない、心配させたくない、安心させたい、喜ばせてやりたい、そんなこんなでグルグルと迷っているうち、最大の過ちの一歩手前まで行ってしまう嗣雄に「アホかー!」と思うが、「親の気持ちもわかる、できるならいい子でありたい」と思うレズビアン・ゲイが本当にこの回路から逃げ出せるだろうか。
愛知県議のアンケートを読んだときもまた考えさせられてしまったが、「自分の身近な人間や家族が同性愛者なんて、受け入れがたくてあたりまえだ」という「常識」がすみずみまで染み込んでいるかぎり、かならず同性愛者にのしかかってくることなのだ。


目下あがっている問題、「逃げることと,隠すことはちがう」というのは、クローゼットを「選択している」レズビアン・ゲイ(僕もそうだ)にとって、かなり重要な問題かもしれない。


僕としては、へいたろうさんの別の作品「わん!」が早く読みたい。
こちらは凸凹カップルのただかわいくて楽しいドタバタラブコメで、ゲイ人生のほろ苦さやら重さは感じさせないから。
こういうのも読みたいが、ああいうのも読みたい、そんな感じである。


ともあれ、この先も楽しみにしております、へいたろうさん(ファンコール)。

*1:はじめの「はじめてネタ」のころは年相応におっさんぽいのだが、「はじめてネタ」が終わり、ゲイ活動にミセコ仕事に忙しくなると、どんどん若返ってくるのはなぜ?ゲイは若いってこと?