今さらながら

カンロ「ピュレグミ」のゲイ版『卒業』CMがいいなあと思っていたら、いつも拝読しているゲイブロガー円山てのるさんが、エントリを書いていらした。必読。

低能流ゲイ文章計画−あら、ゲイネタCM!


しかし、ここでの話題は、ゲイネタCMではない。
円山さんのエッセイを読みつつ、リンクしてらした「ピュレグミ」のサイトを見て、ドキッとした。投稿★カミングOUTなるページがあったのだ。
僕はバカなもんだから、一瞬、これは「ピュレグミ」ゲイ『卒業』編CMを記念してカミングアウト投稿を募集する企画?…なんて思ったわけです。違いました。

ちょっぴりヘコんだココロをピュレグミで癒そっ!


投稿★カミングOUT


あなたが体験した「トホホなお話し」「こんなはずじゃなかった!お話し」「恥ずかし〜いお話し」などなど、毎月のテーマにそったエピソードをお寄せ下さい。
ご応募いただいたエピソードのなかから、「これは癒してあげたい」エピソードを、PurePureGardenに掲載させていただきます。…(略)
 第9回のテーマ
 入学式の恥ずかしい思いで!


危うく「トホホなゲイです」「ゲイなはずじゃなかった!」「ゲイで恥ずかし〜い」投稿をしてしまう、わきゃなかったが、「カミングアウト=恥ずかしいことを語る」という意味があるのか。と、思ったら、はてなキーワードにもカミングアウト=「軽く使いたいとき:(ネタとしての)自虐的告白」とあるじゃないか。己の不明を深く恥じる。


今さらのように「カミングアウト」で検索してみると、こんなページがヒットする。2003年の記事だ。

「カミングアウト 〜Coming OutするCloset Queen〜」


最近よく使われているカタカナ英語で、「カミングアウト」という表現があります。ラジオやテレビなどでも「みなさんどんどんカミングアウトしてください!!」などと言っているのを聞くことがあるし、教育現場で配布されるチラシなどにも「カミングアウト」が使われているのを見ることがあります。この表現は、「人に言えなかったことを打ち明ける、告白する」という意味で使われていることが多いように思います。


英語教師の基礎知識ーカミングアウト 〜Coming OutするCloset Queen〜


あれ〜、2003年すでに教育現場でこんな普及が。俺はバカだったのか?尾辻かな子さんの本だって、2005年だ。
もう少し引用しよう。

現代スラング英和辞典(秀文インターナショナル)は次のような解説をしています。

come out 自分がホモであることを認めて積極的に同姓のセックス相手を捜し求める。(同性愛について疑いや不安を解決したか、それとも不安が残るにもかかわらず積極的に相手を求める決心をしたいという含みがある。時には「公に自分がホモであることを発表する」という意味で come out が使われるが、come out した人がしばしばそれをホモの仲間だけに知らせ、ホモでない友人や身内には秘密にすることがある。)[同性愛者用語]

英語教師の基礎知識ーカミングアウト 〜Coming OutするCloset Queen〜

もともとは[同性愛者用語]であり、「Closet Queen が Closet から Coming Out する(隠れホモが押入れから出てくる)」という意味であることを認識したうえで、「カミングアウト」という表現を使うべきなのでしょうね。とりあえず、教育現場で声高らかに使う表現ではないかと思いますが、みなさんはどう思われますか?


英語教師の基礎知識ーカミングアウト 〜Coming OutするCloset Queen〜


英語先生は「隠れホモ」が使う言葉だから教育現場にゃふさわしくねえ、と仰っているようで、また僕のようなすぐ吠える狂犬ホモはムッとしてしまうのだが、こんな意味を載せている辞書があるのか、と少し驚いたりもする。「同性愛について疑いや不安を解決したか、それとも不安が残るにもかかわらず積極的に相手を求める決心をしたい」なんて意味で使われることも、あった時代があるんだろうか?僕の乏しい知識でも、WikipediaでもUrban DictionaryA Dictionary of Slangのネット上のスラング辞書でも、今はこんな意味は見あたらない。


あらためてウィキペディアのカミングアウトの項を見る。日本語のカミングアウトの定義は、性的少数者だけでなく、部落出身者、在日が数えられているところに特徴がある(日本での最初のカミングアウトの代表例は薬害エイズ事件被害者)。英語版Wikipediaでは少数民族や非差別民への言及はない。
単に少数派だというだけでなく、社会のなかで「自分自身を隠さねばならない」マイノリティ集団が性的少数者以外にもあるというのが、日本の特徴なのだろうか。カミングアウトの主体として、オタクや腐女子も上がっている。
欧米では隠していた改宗や薬物依存、大学中退などを告げることもカミングアウトと言い、これは「言いにくいことを告げる」に近そうだけれど、告げることにより周囲と新しく肯定的に関係を築き直すという、カミングアウトの本来の意味に近い。


マイノリティの自己肯定という意味を離れたカミングアウトという言葉が、いつごろ、どういう経路でここまで広がったのか、なんだか興味がある。「ピュレグミ」サイトに恥ずかしい思い出を投稿する人には、カミングアウトがレズビアンやゲイやトランスジェンダーにかかわる言葉だとは知らない人もいるんだろうなと思うと、不思議な気分になる。僕のなかでもまだ十分に機能していない言葉が、さらりと使われている。
言葉って、ほんとうに不思議なシロモノだと思う。