「同性愛」をフィルタリング対象にしない〜EMA意見書(案)を支持します(9月1日締切)


カミクズヒロイさんからの情報ですー
2008年8月22日のヒトとナリーカミクズヒロイ


同性愛、宗教などは携帯フィルタリング対象外に〜EMAが意見書案ーInternet Watch


現在、総務省により、「インターネット上での違法・有害情報からの青少年の保護」を目的とした、携帯ネット・アクセスのフィルタリング・サービス普及が進められています。6月に青少年ネット規制法が成立し、多々疑問・議論をはらむ未成年向けネット規制の義務化は、急速に現実化しています。


これに対して、規制そのものへの批判をはじめ、フィルタリング方式や何がフィルタリングされるのかという問題の是非が厳しく議論され、無謀で無意味なフィルタリングの強引な施行が行われないよう、社会からの監視と批判が行われることが必要だと思います。


現在行われているフィルタリング・サービスとはどのようなものか?については、yusukemさんのはてなダイアリー消費日記@はてなをごらん下さい。


フィルタリング普及・義務化の流れのなかで、2007年末、フィルタリング対象を検討し改善を図る第三者機関として有限責任中間法人モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(=EMA、代表理事堀部 政男)が設立され*1、アンケート調査などを通してフィルタリング政策の検討を行ってきました。



この結果が、8月21日、青少年向け携帯フィルタリングに関する意見書(案)として発表されました。


携帯電話事業者が提供する「特定分類アクセス制限方式(いわゆるブラックリスト方式)」におけるアクセス制限対象カテゴリー選択基準に関する意見書(案)(PDFファイルが開きます)


性的少数者の立場から、この意見書が画期的な点は、ネットスター社などのフィルタリングサービス会社が作り、いくつかの携帯サービスで青少年向けフィルタリング対象に設定されていた「同性愛」カテゴリをフィルタリング対象から外すこと、カテゴリ自体の撤廃を提案していることです。


これまで、アダルトではない同性愛関連情報サイトも、「同性愛(ゲイ・レズビアントランスジェンダーの生活スタイルに関する各種情報の提供)」としてカテゴリが設けられ、なぜかフィルタリング対象となっていました。
参考:ネットスター社のフィルタリング・カテゴリ一覧


この意見書(案)では、「アクセス制限対象とすべき要件に該当しない」として、4カテゴリ(セキリティ・プロキシ/同性愛/宗教/政治活動・政党)をフィルタリング対象から外すことを提案していますが、「同性愛」カテゴリをフィルタリング対象から外す理由は、次のように説明されています。



 同性愛でも性的な情報を含むサイトはアダルトカテゴリーに分類されており、青少年にとって同性愛自体が有害とは考えられない。性同一性障害については、国内外においてもその理解は進んでおり、同性愛者への差別、青少年の同性愛への偏見を助長することも考えられるためアクセス制限対象カテゴリーとすべきでなく、カテゴリー自体の必要性の有無についても検討が必要と考える。


まったくそのとおり、としか言いようのない提言です。


露骨なアダルトやポルノはできるだけ未成年から遠ざけたい、と誰しも思って当然かもしれません(それが国家主導の規制によって行われるべきであるとも、そういう方法で規制が可能であるとも、僕は思えないのですが)。しかし、男性が女性に、女性が男性に惹かれる異性愛についての情報をフィルタリングしようとは、ほとんどの人が思わないでしょう。そんなことをしたら、恋愛や結婚やそれに関わるライフスタイルの要素の入った映画・ドラマ・小説・漫画など、すべて要規制ということになってしまいます。
それと同じように、同性が同性に惹かれる同性愛が、フィルタリングの必要があるわけありません。


アダルトでもない同性愛情報サイトにまで特定のカテゴリを設け、フィルタリングしようとする現在の政策は、ただ、同性愛者など性的少数者に対する意味のない偏見のあらわれでしかありません。


マイノリティである同性愛者や両性愛者、トランスジェンダー性同一性障害についての情報は,圧倒的に不足しています。子ども達が日常生活で接する性、恋愛、身体の成長についての情報は、異性愛/非トランスジェンダーのものばかりです。
同性愛やトランスジェンダーは、ただ多数派の異性愛と違うというだけの理由で、揶揄や否定の対象になることもたびたびあります。親や学校の教師ですら、性的少数者の子どもの人格を否定するような言葉を、平気で口にするのです。


性的少数者の子どもは、マスメディア、家庭、学校から、自分が誰か、どう生きればいいのかという知識と情報を、ほとんど得ることができない。少しずつ状況は改善されていますが、これが現状です。


インターネットは、そんな子ども達の大きな支えになっています。
多数のサイトが、性的少数者の子どもを励まし、自分たちの性や身体について、正しい知識を得ることができる情報を発信しています。
自分と同じような人間は大勢いるのだと気づき、性的少数者を取り巻く社会や世界の状況を知り、生き方を学ぶ。悩みを打ち明け合い、アドバイスを与え合う。異性愛のみが正しい性だとされ、他の性が間違った性のように敬遠され、沈黙を押しつけられるこの社会で、インターネットは性的少数者の子ども達に、そういう場を可能にしました。


フィルタリングは、そのような可能性を奪う行為です。
学校や家庭で同性愛者やトランスジェンダーの子ども達をきちんと受けとめ、正しい知識を与えることもしていないのに、一方的にインターネットの情報からも切り離そうとする。のちの人生に大きな影響を与える人格形成の時期に、性的少数者に自己否定と孤立を味わえ、と言っているにも等しい政策です。もし総務省の青少年向けインターネット政策が、「子どもの健全な成長」を目的としているのであれば、完全に方法を間違えている、といっていいでしょう。


今回のEMAの意見書(案)は、この問題を、的確にすくいあげています。

アンケートでEMA意見書(案)を支持する意見を送ります


現在、EMAは、この意見書(案)に対する一般の意見を募集しています(9月1日締め切り)。


携帯電話事業者が提供する「特定分類アクセス制限方式(いわゆるブラックリスト方式)」におけるアクセス制限対象カテゴリー選択基準に関する意見書(案)に関するご意見の募集について(PDFファイルが開きます)


「同性愛」カテゴリをフィルタリング対象から外し、カテゴリそのものを廃止するというEMAの意見書に、抵抗や反発を示す人もいるでしょう。
同性愛を否定しようとする主張もあれば、単に現状維持的に、改善に難色を示す意見も、出ると思います。
性的少数者の情報のフィルタリングが根本的に間違っており、フィルタリングしないことがどれほど重要かを訴えて、意見書(案)が打ち出した方針に支持を表明することが、必要だと思います。


締め切りの9月1日まで、あと1週間時間があります。この意見書(案)に賛意を示される人は、ぜひEMAにその旨を訴えるアンケート用紙を送ってみて下さい。


詳細は↑上掲リンク「ご意見の募集について」の説明文を読めば分かりますが、簡単に説明すると、

意見書(案)に対する意見
  • 規定のアンケート用紙(Excelファイル)をダウンロードする
  • アンケート用紙は、意見書(案)の記載事項について、意見を書き込む(意見書(案)の該当ページを記す)形式になっています
  • 個人情報(名前・勤務先・連絡先・E-mailアドレス)の記入欄もありますが、これは任意で、記入する必要はありません
アンケート用紙の送付方法(詳細は「ご意見の募集について」PDFファイル参照)
  • 電子メール(メールの件名は「カテゴリー選択基準意見書(案)に関するご意見」)
  • 郵送
  • FAX