ネパール国軍レズビアン女性兵士バクティさん不当解雇訴訟敗訴報道


(このエントリは7月18日記)


2007年、ネパール軍で同性と性的関係を持ったとして60日の拘留と解雇処分を受け、軍の処分の不当性を訴えて訴訟を起こしたレズビアン女性兵士バクティ・シャハさんの敗訴が、今月はじめに報道された。
軍隊における同性愛者の処遇を司法の場で問う、おそらくアジア諸国では初めてではないかと考えられる、画期的な裁判だ(以下の報道にあるように、バクティさんは最高裁への上訴を考えており、裁判はまだ終わっていない)。


詳しい裁判の経緯は、バクティさんを応援する会のブログ、 バクティさん支援ブログ参照。


今回の敗訴について、英語のネット・メディアで最も転載率が高いのはMedia Trust of India配信記事(日本語訳)およびBBCの記事(日本語訳)ではないかと思われるのだが、南アジア・ネパール系の英語ネット・メディアからは、他にもさまざまな記事が発信されている。上掲2記事が伝えていない情報もある。
バクティさん裁判=軍の同性愛者兵士処遇問題@ネパール@アジアがどのように報道されているか、その他の(たまたま僕が見た、だが)英語記事をいくつかチェックしてみる。


チェックしたのはとりあえず

  • eKantipur.com
  • South Asian Media Net
  • Nepalmountainnews
  • nepalnews.com

の4つ。

eKantipur.com


http://www.kantipuronline.com/kolnews.php?&nid=152332


昨年8月にバクティさんの解雇問題を報じたKantipur Publicationsのオンライン新聞。
http://www.kantipuronline.com/kolnews.php?&nid=118305
(記事日本語訳はバクティさん支援ブログhttp://d.hatena.ne.jp/oensurukai/20071021/p1参照)
バクティさんの不当解雇取り消し裁判を支援しているLGBT権利団体としては、国際的にも有名なBlue Diamond Society(サイト)の名がたびたび上がっている。しかしこの記事では、ネパールのレズビアン団体Saino NepalとManab Sachetana Sanjalにスポットが当たっている。
バクティさんの不当解雇判決に抗議するデモの描写や、Saino NepalのリーダーMilan Bastolaさんのインタビューが、この現地メディアの関心の高さを伝えている。



サード・ジェンダー、軍法廷の決定に抵抗
Third gender protests army court verdict

ナラヤンガード、7月2日


 レズビアンとサード・ジェンダーが、こここの郡でネパール軍裁判所の決定に抗議した。

 裁判所は月曜日[=6月30日]、ネパール軍の「フィジカル・トレーニングの指導官」への復職を求めるバクティ・シャハの控訴を棄却した。この異議申し立ては、レズビアン組織Saino NepalとManab Sachetana Sanjalに率いられていた。50人以上のレズビアンとサード・ジェンダーが、Lions ChokからPulchokへと行われたデモ集会に加わった。抗議行動のなかで、彼らは軍裁判所の判決を破棄し、シャハを復職させるよう要求した。

「私たちはバクティが職場復帰しないかぎり、抵抗し続けます」Saino NepalのリーダーMilan Bastolaは語る。「これは権利のための戦いなのです」。抗議する人々は、人間として扱われることを求めている。Bastolaは、国家はいまだサード・ジェンダーに対する差別を続けていると言う。

 裁判所の判決によると、シャハの除隊に関する軍裁判所の判決はそのままである。しかし、上訴裁判所は軍が彼女の60日間の懲役を取りやめるよう求めている。彼女はすでに軍法廷での審理のあいだ留置所で60日間を過ごしている。シャハは昨年7月に軍を解雇された。

South Asian Media Net


http://www.southasianmedia.net/cnn.cfm?id=512884&category=Women&Country=NEPAL


南アジア7カ国のニュースをカバーするネットメディア。
軍特別裁判所で行われたバクティさんの控訴審でどのような審理が行われたのか、かなり詳しい(たとえば、軍のスポークスマンが述べていた、バクティさんが訓練所で金を集めたという嫌疑は、特別裁判所の審理で晴らされていることが明らかにされている)。
バクティさんのインタビューもある。最高裁へ訴えるというメッセージも載せられている。
バクティさん解雇の理由は「不適当な性的振る舞い(inappropriate sexual behaviour)」「軍の行動規範に違反したため(violating the army’s code of conduct)」とされている。「軍法は同性愛を認めておらず、違法と見なしている(The Military Act does not recognise homosexuality and deems it illegal)」との指摘も。



軍を解雇され、女性は最高裁
Sacked from army, woman to move SC

2008年7月2日(水) カトマンズ


 不適当な性的振る舞い(inappropriate sexual behaviour)を理由にネパール軍を解雇されたバクティ・シャハは、日曜日のネパール軍特別裁判所の判決に異議を唱え、最高裁へ行く計画を立てている。
 特別裁判所は彼女を除隊するという先の軍裁判所の判決を支持した。

 22歳のシャハは、ネパール軍の伍長としてバクタプール郡カリパティ訓練所に勤務していたが、軍警察により2007年7月に拘留された。
 彼女は「不適当な行為」および訓練生から寄付を募ったという理由で解雇された。

 彼女の控訴に対し、軍特別裁判所は日曜日、彼女の寄付金集めの嫌疑を晴らし、彼女の拘留は違法であると宣言したが、彼女は軍務に適さないとの裁決を下した。
 彼女は6ヶ月間拘留されていた。

 4年前ネパール軍に入隊したシャハは、自分がレズビアンであることを認めているが、自分に対して向けられた主張のすべてを否認した。

「私はただ訓練生が私のベッドで私の隣に寝そべっていたという理由で起訴されたのです」彼女は語る。

「私は何の理由もなく60日間訓練所の中に拘留されました」彼女はさらに語る。

「私は最高裁へ訴えます。私が軍務に復帰し、不当な拘留に対する保障を求めるために最高裁の介入を求めます」彼女は付け加えた。

 性的少数者の福祉のためのNGO、ブルー・ダイアモンド・ソサエティ議長スニル・パントは、バクティに対するネパール軍の行為は、単に彼女が男性的な外見をしているゆえの偏見だと語る。「まさにいま、軍の司法機関が独立し、ガラス張りに、民主的になるときだ」パントは加えて言う。

 しかし、軍のスポークスマンRamindra Chhetri准将は、シャハは軍の行動規範に違反したため(violating the army’s code of conduct)に除隊されたのだと語る。

 軍法は同性愛を認めておらず、違法と見なしている(The Military Act does not recognise homosexuality and deems it illegal)。


Nepalmountainnews


http://www.nepalmountainnews.com/news.php/2008/07/01/female-army- retires-for-lesbian-affair.html


国際的なネパール山岳研究系サイト、ネパールの社会・地理の情報とともに、時事ニュースも発信している。
バクティさん解雇理由は「『レズビアン』(←カッコつき)であること」。
「ネパール軍における女性同性愛行為は、昨年明るみに出された(Female lesbian activities in the Nepal Army were brought into light last year)」というのは、バクティさん問題が軍の同性間セクハラのように捉えられているということだろうか?



女性兵士が「レズビアン」であることを理由に罷免される
Female army staff handed resignation for being 'lesbian'

Nepalmountainnews Report  2008年7月1日


 ネパール軍の女性部員が軍の訓練所の中でレズビアン関係を結んだと疑われて(for her alleged involvement in lesbian activities inside the army training center)除隊されたと、火曜日、軍特別裁判所は伝えた。
 この件に関する決定は、バクタプールBhaktapurのハリパティKharipati訓練所に勤務する女性兵士バクティ・シャハが、そこで訓練を受けている士官候補生と反道徳的な関係を持っている(engaged in immoral relation)のを発見されたのを受けて行われた。
 ネパール軍における女性同性愛行為は、昨年明るみに出された。
 軍の下位の裁判所である軍簡易裁判所(Summary General Army Court)は、彼女に60日間の懲役と除隊の刑(将来他の職業に就く資格が奪われることはない)を科した。
 しかし、性的少数者の権利のために活動する組織ブルー・ダイアモンド・ソサエティは、軍の判決に反対、この決定は先の最高裁で保障されたサード・ジェンダーの承認に反するものだと述べる。
 最高裁が6ヶ月前サード・ジェンダーに他の男女が享受する市民権とその他の権利を保障するよう政府に求める決定を出したことは注目すべきことだ。

nepalnews.com


http://www.nepalnews.com/archive/2008/jul/jul01/news06.php


eKantipur.comの発信元が発行する『カンティプール・デイリー』を参照。ただしちょっと情報が混乱(バクティさんが訓練を受けていたとか、将来公職につく権利を制限されたとか)。
バクティさんの解雇理由は「『レズビアン』(←カッコつき)であるために(on charge of being 'lesbian')」。



NA court expels 'lesbian' from service
ネパール軍裁判所は「レズビアン」を除隊


 ネパール軍の特別裁判所は、先にネパール軍一般裁判所(NA's general court)が出した、隊員の1人を「レズビアン」であるために(on charge of being 'lesbian')除隊するという決定を確認した。

『カンティプール・デイリーKantipur daily』によると、バクタプールBhaktapur郡カリパティKharipatiで訓練を受けていたバクティ・シャハは、将来いかなる公職につくことも制限されるという判決とともに除隊された。一般的な取り調べを担当するネパール軍裁判所(NA's court of general inquiry)は、昨年、彼女を60日間拘留した上でそのような訴訟を行った。
 彼女はキャンプの女性メンバーの1人と関係を持ったと告訴された。

 ブルー・ダイアモンド・ソサエティは、ネパール軍のより上の権威に対しこの決定を再考するよう訴えを起こした。特別裁判所は彼女を60日間拘留するという訴訟は取り下げた。が、彼女はすでに(その期間の拘留を)受けていた。

 最高裁は昨年、「サード・セックス[サード・ジェンダー]」をすべての公的施設・サービスにおいて他と同じように処遇することを政府に求めた。