HRW、グアテマラ「結婚・家族保護条例」に対するジョグジャカルタ原則適用の勧告


性的指向と性自認の問題に対する国際人権法の適用に関するジョグジャカルタ原則


国際人権法の観点から、多様な性的指向性自認の権利の平等を実現するための総合的な指針を示した「ジョグジャカルタ原則」だが、原則として有効性を持つためには、使われなければ意味がない。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ジョグジャカルタ原則の公布に主要な役割を果たしてきたのだが、その実地での運用にも努めている。


10月1日、HRWグアテマラ議会に対し「結婚・家族保護条例(Protection for Marriage and Family Act)」制定に反対する公開書簡を出したが、この書簡では、「家族」の定義の制限(男女の婚姻にもとづく核家族)につながるこの法案を批判する1つの論拠として、ジョグジャカルタ原則が引用されている。

HRW−2007/10/1−グアテマラは家族を脅かす法案の否決を:40%の家族の権利を奪う差別的法案
HRW−「結婚・家族条例」に関するグアテマラ議会への書簡


Catholic News Agencyの関連記事。

CNA-ヒューマン・ライツ・ウォッチ、結婚・家族保護条例に反対


グアテマラシティ 2007年10月4日 10:00am(CNA)
 グアテマラ議会宛の書簡で、HRWは議員に対し「結婚・家族保護条例(Protection for Marriage and Family Act)」に反対票を投じるよう訴えた。

 この法は、「家族は本質的に、ただ男性と女性の婚姻関係からのみ…その本質、純粋性、自然、存在理由、価値と本来的な意義…との調和において…生まれる(family essentially originates, exclusively, from the conjugal union between a man and a woman, ノ in harmony with its essence, its purity, its nature, its reason of being, its values and original meaning...)」ことを認めさせようとするものだ。

 HRWは、この法が、グアテマラに存在する多くのさまざまな家族形態*1とともに、シングル家族・離婚者・多数の未婚異性愛カップルを排除するという理由で、議員らに同法への反対を強く呼びかけている。

 HRWLGBT権利プログラムの研究者Juliana Cano Nietoによれば、「この法案の目的は、すべての家族が受けることができる権利と承認を、ある種のパートナー、親、子どもから奪い取ることです」。

 同法の最終的な決議は今週中に行われると予測されている。HRWは、結婚と家族の法による保護が試みられるたび、国際的な反対はさらに拡大していると認めた。

 家族を護るために、HRWジョグジャカルタ原則を適用することを提案している。この原則は、国際人権法を性的指向性自認に適用したもので、2007年に成立した。その原則には次のような条文がある「すべての人間は、その性的指向または性自認を問わず、家族を形成する権利を持つ。…いかなる家族も、その構成員の性的指向または性自認を理由に差別を受けてはならない」。


グアテマラ議会での決議は10月第1週に行われているはずだが、結果はどうなったのだろうか。
次の記事を見る限り、法案は通過しそうな勢いではあるが。
少なくとも、カトリック多数派、マチスモ文化でゲイ・バッシングが激しいグアテマラで、HRWの旗色は良さそうとは言えない。

Inter Press Service (IPS)-グアテマラ:「家族」の定義を制限しかねない法案への懸念


しかしこの記事でも、ジョグジャカルタ原則はトピックとして取り上げられている。
グアテマラレズビアン活動家は、「私たちは同性結婚制度を要求するわけではない」としつつ、同性愛者の基本的権利の擁護の基準として、ジョグジャカルタ原則に言及している。

 「性の多様性を排斥する法が通過することは、性的少数者にさらに暴力と侵害が行われる環境を生み出しますから、HRWに賛同します」「解放されたレズビアン協会Association of Liberated Lesbians (LESBIRADAS)」会長Claudia AcevedoはIPSに語った。
 この活動家は、29名の国際人権法専門家によりインドネシアの同名の市で採択され、2007年にジュネーブで公布された「ジョグジャカルタ原則」に言及した。
[…]
 「私たちは同性結婚同性カップルによる養子縁組を求めているのではありません。ただ基本的な法的権利を享受できるようになりたいだけです」。Acevedoは言い、グアテマラでは、ゲイ・レズビアンの権利がしばしば性的指向を理由に踏みにじられるのだと付け加えた。


ジョグジャカルタ原則の普及と適用の実現は、そう容易ではないかもしれない。
こうしたケースを通し、少しずつ知名度を上げ、効力をつけてゆくことを願いたいのだが。

*1:HRWグアテマラの家族の40%近くが同法が「家族」として規定する核家族ではないことをデータとして挙げている