ぜったいに、アブソルート・ウォッカ


昨日のエントリの最後でこのところ割とニュースになっているLGBT市場について機嫌の悪い言いかたをしたが、こういうことにネチネチぐじぐじ不満ばかり言うのは、全然生産的でないと反省した。


LGBTが市場として注目される時、当のLGBTはそれをどう利用すればいいか。それについてはid:miyakichiさんが、ご自身の掲示板にとても明快に書いておられた。ぜひエントリに書き直してくださらないだろうか。


僕は自分で考えるほどの力もないので、他人のフンドシで相撲を、もとい、今ぜひ読み返しておきたい文章を上げるに留める。


大塚隆史のサイト・タコ―To TAQ to be straight-ゲイ・ファースト・ディクショナリー「アブソルート・ウォッカ」


僕もいいかげん若いとはいえないけれども、それでも大塚隆史さんのことは「雲の上の人」と感じる世代だ。革命の闘士というか独立戦争の英雄というか、多くの偉業を成し遂げてきた歴史上の人物をドラマティックなヒロイズムを感じながら眺める、というのに近い。現役の方を歴史あつかいするのは失礼な話だけど、ラジオ番組「スネークマン・ショー」で大塚さんが実名でゲイのリスナーに語りかけていた頃、僕は3歳児だった。伝説の域なのである。


それでも、僕も大塚さんにはたくさんのものを教えていただいたという記憶がある。そのひとつが、『バディ』に大塚さんが連載していたエッセイ「ゲイ・ファースト・ディクショナリー」だ。ゲイのシンボルが最初はピンクトライアングルで、そののちすべてのセクシュアルマイノリティを象徴するレインボウ・フラッグが取って代わり、しかもその虹は6色だ、ということもこの「辞書」で知った。「ゲイも学ばなければゲイになれない」と教えられた気がした(そのわりに、結局たいして勉強しなかったが)。


「アブソルート・ウォッカ」は、スウェーデンアブソルート社が他の企業に先駆けてゲイ市場に目をつけ、ゲイフレンドリーな広告戦略を展開してきたことを、高く評価したもの。
アブソルート・ウォッカのセンスのいい広告はここで見ることができるが、こんなのやこんなポスターを見せられたら、たしかにいい気分になってしまう。
大塚さんは言う。

ゲイはゲイ・フレンドリーな企業や、ゲイを顧客として意識している企業を応援することで、その力を行使することができる。これから、日本でもゲイにアプローチする企業がもっと出てくるだろう。僕たちはけっこう面白い時代を迎えようとしているのだ。そんな時代を迎えるにあたって、企業のアプローチに応えることで自分たちの力を行使できるという意識を持っておくのは重要だと思う。
セクシーな男二人が愛し合うカップルを演じている。そのイメージにかぶせて商品が浮かび上がる。そんなCFを想像してみて欲しい。メディアに流れるゲイのイメージがさわやかなものになれば、社会が持つゲイへのイメージも変わっていくだろう。ゲイ・フレンドリーな企業ではゲイも自分を隠さずに働けるようになる。企業を動かすことは、自分たちが生きやすい、そして自分たちにとって面白い社会を作り出す道でもあるのだ。
ものを買うといったささやかな行為も、どこかでゲイ全体に関わる問題につながっていると意識したらおろそかにはできない。
大塚隆史「アブソルート・ウォッカ


僕らはいい購買者にならなければならないわけだ。商売は商売だが、商売にも誠意が必要だ。コソコソせずに堂々とセクマイの側に立てる企業を買うべきだろう。ろくにリサーチもしていないLGBTイメージを適当に出してきたら、きちんと不快を表明すべき、つまり洟もひっ掛けず、大いにあざ笑ってやるべきだろう。めずらしく同性愛を取り上げているからって、下らないものをありがたがる必要はない。


それにしても、このエッセイが書かれたのは1997年、10年前である。大塚さんは10年時代を先取りしていて、いろいろ教えてもらったはずの僕はほんとうにたいして進歩していない。

追記


miyakichiさんが、ほんとうに書いてくださった。ありがとうございます。
みやきち日記―LGBTが市場として注目される時、当のLGBTはどうすべきか

そうだ、これもリンクしておこう。
ゲイジャパンニュース―LGBTマーケティング