今日、モスクワで「スラヴィック・プライド 09」開催です(追記あり)

  
今日は、国際反ホモフォビアの日 International Day Against Homophobia = IDAHOの前夜祭です。
そして、欧州の歌の祭典ユーロビジョン・ソング・コンテスト2009の最終決戦、ファイナル・ステージの日。
  
ユーロビジョンが開催されているモスクワで、今日の午後(現地時間)、ロシア・ベラルーシLGBTアクティヴィストたちによる、「スラヴィック・プライド」パレードが開催されます。


  
モスクワ・プライドによって2006年から開催が試みられ続けてきたLGBTの権利のためのプライド・パレードは、毎年、モスクワ市当局や宗教右派・ネオナチ集団によって弾圧され、多くの逮捕者を出してきました。
今年も、モスクワ市長ユーリ・ラスコフは、パレード参加者は逮捕すると公然と弾圧を予告しています。
Slavic Pride 09 (16 May 2009) Support Banner 「スラヴィック・プライド」(5月16日(土)@モスクワ)応援バナーーに し へ ゆ く
  
イギリスのゲイ・ニュースサイト、UK Gay Newsは、スラヴィック・プライドのために特設ブログを作って、現地からのリアルタイム報道を行っています。  
Moscow Gay Pride and Eurovision Latest - UK Gay News
5月16日モスクワ・スラヴィック・プライドのニュース
(抄訳です。誤訳もたくさんあると思いますので注意)
モスクワ現地時間Time and Date.com
  
昨日から、状況はいきなり動き出したようです。
モスクワ市当局の公然のプライド禁止と弾圧予告について、ユーロビジョン参加国もオランダ以外は沈黙していたのですが、UK Gay Newsのブログによれば、フィンランド、ドイツ、オランダ、フランス、合衆国、英国大使館が、パレードに対して暴行や武力行使が行われないか監視を予定していることが明らかになりました。
デンマークのユーロビジョン参加アーティスト、Niels Brinckは、最終決戦のステージでプライドについて発言するかもしれないと語っています。
フランス代表団は、パレードへの参加を示唆しているとか。
  
しかし、言うまでもないことですが、このプライド・パレードは無許可です。取り締まりが行われても、法的な正当性は当局にあります(何が合法か決める権限をすべてを握っているのが最初からそっちですから)。パレード参加者は、はじめから逮捕されることを承知のうえで歩くわけです。2007年のモスクワ・プライドを取り締まった警察は、宗教右派やネオナチがパレード参加者に暴力を振るうのを傍観したあと、暴力を振るわれて傷ついたパレード参加者だけを逮捕したといいます。それほど過酷なパレードです。
  
パレードは現地時間の16日午後に行われるとのことなので、日本時間では夜(時差約6時間)に様子が伝わるでしょうか。
  
モスクワ・プライドの不屈のアクティヴィストでスラヴィック・プライドの中心的オーガナイザー、ニコライ・アレクセイエフが、昨夜隠れ家(プライド主催者グループはみな逮捕を避けて潜伏中だそうです)から発表したメッセージが、現地時間午前1時に伝えられています。
  

モスクワのどこかの「秘密の隠れ場所」から、スラヴ・プライドの中心的オーガナイザー、ニコライ・アレクセイエフは宣言している。「みんな、明日のことにすごく興奮している。今夜モスクワ市警から脅された[注:プライド参加者への逮捕予告が出た]が、ますます通りに出て行こうという気になっている。ほんとうに信じられない、我々がアクションを組織したのは4回目だが、今年はロシアとベラルーシの複数の地域から55人のアクティヴィストが参加しているなんて。かれらはイベントのためにやってきて、木曜からそのために活動している、どんなことよりも、明日歩くことを望んでいる人たちだ。4回目、我々はロシア人に、ゲイ・レズビアンが臆病者ではないと、自分の権利のために歩くことを恐れないのだと示そうとしている。ロシアのメディアでの報道の多さを見れば、このメッセージは届いているということが分かる!」
  
Speaking from his 'secret hideaway' somewhere in Moscow, the chief Slavic Gay Pride organiser, Nikolai Alekseev, declared: "Everyone is very excited about tomorrow and more than ever ready to go in the street despite the threats reported by the Moscow police tonight. It is just hard to believe that despite we are organizing the action for the 4th time, we have this year 55 activists from several regions of Russia and Belarus who checked in for the event and who since thursday are just working on it and who more than everything want to march tomorrow. For the forth time, we are just showing to Russian that gays and lesbians are not cowards and that they are not scared to march for their rights. And looking at the high number of reports in the Russian media, the message is delivered!"
  
参加する人たちの無事を祈りながら、つぎのニュースを待ちたいと思います。
  

21:30追記

いまUK Gay Newsのブログに現地時間15:15までのレポートが上がっていますが…
  
プライド・パレードは現地時間12:10に開始されましたが、12:50までに参加した約40名のすべてのアクティヴィストが逮捕されたそうです。メディアのインタビューの最中、大勢のジャーナリストの目前ででした。
  
英国から参加したLGBT人権活動家ピーター・タッチェル氏はほどなく釈放されましたが、アメリカから参加したアンディ・タイヤー氏は警察に拘留されているそうです(追記:現地時間16日17:50に釈放されました)。
ニコライ・アレクセイエフ氏も逮捕され、どうなっているのかは不明です。
  
在モスクワ・ベラルーシ大使館は、逮捕されたベラルーシのアクティビストたちの救援を拒否しています。
  
これから多くの報道が流れると思いますが、逮捕された人たちの無事が、一刻も早く確認できればと思います。
  

5月17日9:00追記

現地時間23:45のUK Gay Newsによれば、この時間までに拘留されていたベラルーシのアクティヴィストたちはすべて釈放されたそうです。よかった。
いま、ニコライ・アレクセイエフ氏とニコライ・バーエフNikolai Baev氏を含む6名がまだ留置所に拘留されているそうです。かれらは警察への不服従の罪に問われ、有罪が確定したら懲役15日の実刑が科されるだろうと伝えられています。
  

5月18日追記

miyakichiさんのみやきち日記によると、アレクセイエフ氏らを含むすべてのパレード参加者が釈放されたそうです。よかった!
(miyakichiさんのエントリは、スラヴィック・プライド09弾圧事件の経過について、いちばん詳しく、分かりやすくまとめています。ぜひ読んでください。)
  
プライド・パレード主催者からのメッセージが発表されています。
(すごいヘタ訳です↓)  
スラヴィック・プライド主催者からのメッセージ
  
来年の第2回スラヴィック・プライドはベラルーシミンスクで(2010年5月)、第5回モスクワ・プライドは2010年5月29日に開催予定だそうです。
不屈のロシア、ベラルーシのLGBTたちに敬意を捧げるとともに、今回モスクワ市がやったことが世界の注目を浴びること、世界のスラヴィック・プライドへの関心が、ロシアやスラヴ諸国の(また、世界各地で国家・体制により行われている)LGBT人権侵害の抑制につながってゆくことを願います。
  
  

関連ブログ記事(日本語)

たくさんのソースに依拠して書かれています。
  
モスクワのゲイ・プライド・マーチ「スラヴィック・プライド09」、暴力と逮捕が横行する結果に(追記3件あり) - みやきち日記
  
ロシア、ゲイ・パレードを粉砕 アクティヴィストを逮捕へ - HODGE’S PARROT
  
モスクワのゲイ・プライド・マーチ「スラヴィック・プライド09」で起こったことまとめ - みやきち日記
これは分かり易いです。日本時間5月18日までの経緯と現状と、弾圧が行われた背景であるロシアの同性愛嫌悪の状況について、一番詳しく、一番分かり易くまとめている日本語記事ではないでしょうか。