国際反ホモフォビアの日(5月17日)は、「反トランスフォビアの日」:IDAHO Committeeのアピール

  
(5月17日追記)
75カ国300団体がアピールに署名したそうです!
個人ではパリ市長ベルトラン・デラノエ市長や哲学者ジュディス・バトラーなど、すごい顔ぶれが揃っています。署名人・団体の一覧はこの↑リンクから。

  
国際反ホモフォビアの日 IDAHO = International Day Against Homophobia (5月17日)
  
日本のイベント・サイト やっぱ愛ダホ!Idaho-net
 札幌、仙台、千葉、新宿、浜松、名古屋、大阪、甲子園、福岡の9都市で街頭アクションが行われるそうです。
 「多様な性にYes!の一言メッセージ」募集 5月14日までだそうです。
  
1990年5月17日、WHOの「国際疾病分類(ICD)」から同性愛に関する項目が消え、「いかなる性的指向も障害とは看做されず、治療の対象にはならない」ことが明らかにされました(この経緯については、不完全ですが去年の5月17日のエントリを参照)。
  
これを記念して、5月17日は国際反ホモフォビアの日 International Day Against Homophobia = IDAHO」、未だ世界各地で終わらない同性愛者に対する差別や迫害に抗議し、同性愛差別の背景にある同性愛嫌悪(ホモフォビア)との戦いを訴える日とされています。
  
5月17日が近づくにつれ、色々な国のIDAHOサイトが活動をはじめ、イベント情報が流れています。
日本では、9都市で街頭アクションが行われるそうです。
今年の5月17日は日曜日、かなり注目を集めるかもしれませんね。
  
各国・各都市でさまざまなイベントが行われることになると思いますが、インターナショナルなIDAHOネット・IDAHO Committeeは、今年のIDAHOを「反トランスフォビア」を訴える日にすることを、呼びかけています。
  
トランスフォビア=トランス嫌悪=トランスジェンダートランスセクシュアルなど、「男/女」の二元的な性別の枠を越えている人に対する、非合理的な嫌悪感情、それによるトランスの人々への差別や暴力行為。
  
IDAHO Committeeのサイトには、国連・WHO・各国政府に対し、トランスフォビアに対する取り組みを要求するアピールが掲載されています。
  
トランスフォビアの拒絶と性自認の尊重を求める国際アピール International Appeal to reject transphobia and respect gender identity
  
このエントリの下に、(またヘタ訳ですが)訳してみました。
  
このアピールは、いま世界の多くの国で、トランスジェンダートランスセクシュアルの人びとが偏見や憎悪犯罪の恐怖に直面していること、あるいは直接的な暴力に晒されなくとも、性別二元制度に基づく社会が、社会生活、日常生活の多岐に亘って、トランスの人びとに苦痛を与えていることを伝えています。
そして、このような状況を変えるために、
国連に対してはーいま世界で起きているトランスの人びとに対する憎悪犯罪(ヘイト・クライム)を明らかにし、その撤廃のために行動すること、
WHOに対してはートランスジェンダーを障害と看做さず、トランスの人々が望む適切な医療サービス・サポートを受けられるようにすること、
各国政府に対してはージョグジャカルタ原則(「性的指向と性自認の問題に対する国際人権法の適用に関するジョグジャカルタ原則」)に基づき、性自認ジェンダー表現を理由とした差別を撤廃することを、求めています。
  
現在、このアピールには、
Transgender Europe
Gender DynamiX
ARC International
ILGA
IGLHRC
の5団体が、名を連ねています。
(アピールに賛同したい団体・組織は、IDAHO Committeeにメール(contact@idahomophobia.org)を送れば、5月17日近くに発表されるアピールの署名人のリストに加えられるそうです。)
  
トランスジェンダーを障害と看做さない」というWHOに対する訴えは、ICDに記載されている性同一性障害(F64)を外すことを求める、ということを意味しているんでしょうか?
  
ICDと並んで世界の精神医学の2大典拠とされているアメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計の手引き(DSM)」が2011年に改訂される予定ですが(DSM-V)、改訂版で性同一性障害を削除するか否かという議論が学界では行われているといいます。
このアピールに名を連ねているTransgender Europeは、針間克己先生のブログによれば、DSMからの性同一性障害の項目削除を支持しているとのこと。
次期DSMで性同一性障害は?ーAnno Job Log
  
ひとりひとりのトランスジェンダートランスセクシュアルの人々が、このアピールのような方向性をどう思われるかは、僕には分かりません。
「トランスは障害ではない、障害と看做すな」という主張は、(「同性愛は病気ではない」という主張と同じように、)「障害や病気=悪いもの」とする「健常者至上主義」と表裏一体であるように思われますし、また、ただ性同一性障害を「障害のリストから外す」ことが、トランスの人びとの生き易さにつながるわけではないでしょう。トランスの人びとの生き辛さを作っているのは、性別二元制度にすみずみまで支配された社会なのですから。
  
しかし、アピールのアジェンダの是非はともかく、ホモフォビアへの抵抗を考えてゆくなかで、トランスフォビアのことを考えるのは、とても重要なことだと僕も思います。
  
ホモフォビアは、じつは、トランスフォビアと切り離せません。同性愛に対する偏見は、しばしば、「男らしさ」「女らしさ」という考えかたと強く結びついています(これについては、飯野由里子さんによるこのコラムが分かりやすく説明しています)。ホモフォビアのもたらす差別やステレオタイプな偏見は、トランスの人たちも被っているのです。
  
しかし、ホモフォビアとトランスフォビアは、まったく別物でもあります。そもそも、異性愛・同性愛というカテゴリが、性別二元制を当然の前提にしています。トランスフォビアは、非常にしばしば、同性愛者の中にも強く見られます。同性愛への偏見を批判し、ホモフォビアがもたらす差別の解消を訴えることは、トランスジェンダーへの偏見を批判しトランスフォビアがもたらす差別の解消を訴えることにつながるわけではありません。
  
ホモフォビアが引き起こしてきた差別との人間社会の格闘の歴史を振り返り、いまも世界でホモフォビアが引き起こしている多くの差別問題のことを知り、性の多様性を尊重することの大切さを訴える日、世界の、日本の、自分自身の中のトランスフォビアのことを考えようーその呼びかけに、どうやって答えられるだろうかと、考えています。
  

トランス恐怖を拒否し、性自認の尊重を:国連・WHOおよび世界各国政府への訴え

  
毎日、求められるジェンダー規範に適合できずに生きる人びとが、世界中で暴力・虐待・拷問・憎悪犯罪にさらされています。公共空間においてのみならず、自分の家族の中でも。多くの暴力事件は記録にも残されていませんが、2009年の最初の1週間だけでも、ホンジュラスセルビア、合衆国でMtFトランス女性らが殺害されました。FtMトランス男性も、通常は社会的、文化的に不可視化されているにもかかわらず、同じくように憎悪犯罪、偏見、差別の犠牲になっています。
  
トランスの人びとの基本的人権は、あらゆる国で無視、否定されー無知、偏見、恐怖または嫌悪を被っています。トランスの人びとは日々圧倒的な差別にさらされ、それはかれらの社会からの排斥、貧困、劣悪な医療、相応しい雇用への見込みの薄さにつながっています。
  
各国政府や国際的機関は、トランスの市民を守るどころか、目先のことしか考えない怠慢や反動的な政策で、社会のトランスフォビアを強化しています。
  
法と社会的公正の欠如のために、あまりに多くの国で、トランスの人びとは、根本的に自分の性別ではないことを経験的に知っている性別で生きることを強制されています。ほとんどの国では、人が性別を変更しようとすると、法による処罰、暴力的な虐待、社会的なスティグマを受ける可能性があります。他の国では、合法的に性別変更が認められるためには、不妊手術かその他の主な外科手術が条件となっています。これが不可能な、あるいは望まないトランスの人びとは、自分が望む性別を法的に承認されることができず、国境を越えるとき、警察に助けを求めて駆け込むとき、新しい職に応募するとき、新しい住居に入居するとき、あるいは携帯電話を買おうと思うだけでも、いつも「カムアウト」を強制されるのです。
  
この要因のひとつは、現在の国際的な医療分類が、いまだすべてのトランスの人びとを精神的に「障害がある(disorder)」と見なしていることにあります。この時代錯誤の考えは、侮辱的かつ不正確であり、トランスの人びとの生活のあらゆる場面で、日常的に行われる差別と汚名の正当化に利用されています。
  
近年、一部の国で、その社会的、文化的背景はそれぞれに大きく異なるものの、司法面での重要な発展が見られました。法の勇気ある決断のあとに続いた行政の施策により、トランスの人々はより社会に受け入れられるようになりました。これは、理解と前身は可能であるということを示しています。
  
現在、トランスの人々は世界のあらゆる場所で自身の人権と自由を求めて立ち上がっています。
かれらは一致して、その性自認ジェンダー表現を理由に、自分たちが病気というラベルを貼られたり、人間ならざるものとして扱われることをもはや受け入れることはない、というメッセージを発し続けています。
  
ゆえに私たちは、以下のことを求めます
  

  • WHOは、トランスの人々を精神障害と看做すことを止め、適切な医療と心理学的なサポートを、トランスの人びとが望むようなかたちで受けることができるようにしてください。

  

  • 国連人権機関は、トランスの人々が全世界で直面している人権侵害を調査し、これらの侵害と戦う行動を起こしてください。

  

  • 世界の各国政府は、国際的な[人権法的原則を示す]ジョグジャカルタ原則を採用し、すべてのトランスの人びとが、適切な医療を享受し、もし望むなら性別適合手術を受け、公的身分に望むジェンダーを採用することが許され、トランスフォビア的な差別、偏見、憎悪犯罪にさらされることなく社会、家庭、職場で生活することができ、かれらが警察・司法組織によって直接的、間接的暴力から守られていることを保証して下さい。

  
私たちは、国連、WHO、世界各国政府がこれらの手段をとり、トランスフォビアを退け、市民が文化的自由の一つの表現として、望むジェンダーで不足のない自由な生活を送ることができる権利を、受け入れることを求めます。