インドネシア東部・パプア州、「性的に活動的な」PWHにマイクロチップを埋め込んで監視する条例案:英字・日本語ニュースのリンク集

  
※注記:
※このエントリは、問題がなんらかの解決を見たというニュースが出るまで、随時更新したいと思います。
※僕がチェックできるのは英字・日本語ウェブニュースのみで、現地のインドネシア語ニュースがチェックできないため、ここでカバーされている情報には止むを得ない限界・偏向があることに、ご注意下さい。
※完全な素人の立場からの、自分の理解のための情報収集エントリです。よって、問題を分かり易く「解説」し「伝える」性質のエントリではない(誤りを含む可能性もある)ことを、ご了承ください。
  
※12月15日(月)、可決延期が発表:
インドネシア・パプア州「PWHマイクロチップ監視条例案」延期される(2008/12/16)
  
※2009年12月1日世界エイズデー
  
マイクロチップ問題の波紋から約1年後、2009年第21回世界エイズデーに際したインドネシアHIVエイズ問題の記事の中で、パプア州マイクロチップ監視条例問題が再び議論されている。
インドネシア:HIV予防、厚い壁 感染突出、パプア州 - 毎日jp(毎日新聞)(2009年12月3日)
  
コンテンツ(予定):

  

パプア州マイクロチップによるPWH監視条例案」(未完)

  
恐らくこのニュースは、11月22日以降に、ウェブ上の英字メディアで取り上げられた。日本語では、世界エイズデーの12月1日(月)、YOMIURI ONLINEの記事で伝わった。
  


チップ埋め込んでHIV感染者を監視、インドネシアで窮余の条例案(キャッシュ)
   
ジャカルタ=佐藤浅伸】エイズウイルス(HIV)感染者の皮膚にマイクロチップを埋め込み、信号を受信して性行動を監視する−。
  
 インドネシア東端パプア州で、異例の条例案が可決される見通しが強まっている。
  
 感染拡大に歯止めをかけるための窮余の策だが、民間活動団体(NGO)などから「人権侵害だ」と強い批判が出ている。
  
 条例案によると、「性的に活動的」な感染者・患者が対象で、故意に他人を感染させた場合、最高で禁固6月か罰金5000万ルピア(約40万円)が科せられる。また、全州民にHIV検査を義務付けている。
  
 パプア州は独立紛争が続いたことから外国人の立ち入りが制限され、情報面で立ち遅れた。エイズ教育も普及しておらず、感染者・患者数は累計で約4300人に上り、ジャカルタ特別州と並んでずば抜けて多い。
  
 現地からの報道によると、法案は近く可決され、年内にも施行される可能性が高いが、エイズ問題に取り組む地元NGOなどは「感染者は同じ人間であり、動物ではない。予防のための最善の方法は教育の普及とコンドームの使用の徹底だ」と反発している。
  
(2008年12月1日19時10分−読売新聞)
  
一読して驚く衝撃的なニュースだった。僕は、HIVエイズ問題にはーゲイ男性としてーそこそこ平均知識しかなく、ましてやパプアというインドネシアのいち地方州の名前は、正直いうと、はじめて聞いた。けれど、このニュースには、大きなショックを受けた。
  
HIVエイズについては、世界各地から毎日のように、深刻なニュースが伝えられている。そして、僕はいつもそれに聞かないふり、知らないふりを決め込んでいる。なのになぜ、このインドネシアパプア州のニュースが衝撃的に思われたのか。
  
「性的に活動的」(よく意味が分からない)な人間にマイクロチップを埋め込み行動を監視するというアイディアの異常さ(あからさまに非現実的)のせいだけでは、ないだろう。HIV感染をめぐって世界で、そして日本で起きている/起きつつある、僕のようないち個人すら、知らないふりをしていても感じ取っている問題を、このパプア州条例案がもろに突きつけたように感じたからだと思う。
十分に理解できているか、自分でも分からないのだがー
  

  1. パプア州条例案が、「HIV感染の犯罪化(刑事的処罰対象化)」傾向を牽制するためにUNAIDS(国連エイズ合同計画)が設けようとしている基準を、驚くばかりに逸脱、ほぼ無視しているに等しいこと。
  2. それが、HIV予防・治療プログラムを届かせることが難しい地方のHIV感染拡大への対策として出されていること。つまり、この条例案が、プログラム普及の困難な努力の「放棄宣言」をしてしまっているかのように感じられること。
  3. この「異常な(extraordinary)対策」が出されるに至ったパプア州HIV感染拡大の社会的理由が、パプア州の深刻な先住民抑圧問題に根ざしている、ということ。つまり、深い不信感を生み出してきた対先住民政策の1つの結果への対策として、さらに尊厳を踏みにじり不信を育てるような政策が提起されたということ。

  
  

パプア州PWH監視条例案報道:英字・日本語ニュースのリンク集(随時更新)

  
この条例案のニュースが騒ぎを起こしてから、約3週間経つ(12月13日現在)。「否決されるかもしれない」との報道も出ているが(12月3日)、いったいいまどうなっているのか、はっきりしない。
  
とにかく、限られた情報源だが読むことができるニュースで、この「監視条例案」の問題は何なのか?どんなリアクションが起きているのか、どうなるのか?こんな条例を阻止する対策と支援が、国際社会から与えられることになるのか?を、追ってみたい。
  

発端

  
HIV陽性者にマイクロチップを埋め込んで監視する」という案は、2007年に最初に報道されている。

  

国内メディア

  

  
12月16日、条例案可決延期と、マイクロチップの項目の削除が発表(→「問題の解決」へ)
  

パプア州HIV問題

  
パプア州HIV感染拡大の深刻さを伝える報道は多い。ここでは日本語ニュース以外は、比較的新しいニュースを集める。
  

参考:HIVをめぐる法制化

  

HIV検査の義務化

  

問題の解決(報道待ち)

  

延期

  
続々と、報道が出つつある。
  

  • Microchip ditched in HIV/AIDS bylaw - The Jakarta Post(2008/12/20)
    • 「The articles covered implanting microchips in people with HIV/AIDS deemed to be "sexually aggressive", issuing HIV/AIDS-free cards and the so-called Next Generation Project."It is heartening to know that the three articles have finally been dropped from the bylaw," HIV/AIDS activist from the Jayapura Support Group, Robert Sihombing, said Friday.」マイクロチップ項目だけではなく、「陰性証明書(HIV/AIDS-free cards)」などの項目も削除になったらしい。が、「"However, I wonder why the legislative and executive branches were so quick to approve the provincial draft bylaw without publicizing the amendments." 」「the public had become stuck on the controversial articles and was not aware of the full content of the draft bylaw. 」だそうだ。

  

「健康条例案(health bill)」のその後は?

  
(2009年2月1日記)
マイクロチップ項目や「HIV陰性証明書」項目を削除した「健康条例案」がその後通過したのか、確認できずにいる。「全州民HIV検査義務化」など、慎重を期すべき項目が含まれているのだが、マイクロチップ項目が削除された段階で、報道の関心が明らかに引いている。
インドネシア東部地域からは、パプア州に隣接する西パプア州を1月7日に襲った大震災の被害の様子が伝えられている。そちらのほうも気がかりだ。