John Fisher (Arc International)「第6回国連人権理事会の概観」
LYRIS - Read Message - [ARROW] Update - 6th UN Human Rights Council
このURLは、LGBT権利問題NGOArc InternationalのCo-Director、John Fisherによる第6回国連人権理事会(2007/12/10-14@ジュネーブ)のレポートを、ARROW(Asian-Pacific Resource and Research Centre for Women)がニュースレターに転載したもの。
構成は:
- 第6回国連人権理事会の概観(Overview of the sixth session of the UN Human Rights Council)
- 可能な限りの水準の身体的・精神的健康に対する権利[の特別報告者任期更新問題](The right to the highest attainable standard of physical and mental health)
- 適切な住居に対する権利(The right to adequate housing)
- 宗教または信条を理由としたあらゆる形の不寛容と差別の除去(Elimination of all forms of intolerance and of discrimination based on religion or belief)
- 国連システム全体でのジェンダーの平等(Gender integration throughout the UN system)
以下は、特別報告者ポール・ハント氏の任期更新議論に関連する
- 第6回国連人権理事会の概観
- 可能な限りの水準の身体的・精神的健康に対する権利[の特別報告者任期更新問題]
の日本語訳である。
第6回国連人権理事会の概観
第6回国連人権理事会は先週金曜日に閉会した。この総会では、多数の重要な役職の任期が更新され、全国連システムにおいて女性の人権の平等をはかるという、チリが提起した決議案の多数一致による採択がなされた。
特に、セクシュアリティ問題活動家に関係することとしては、健康・住居・信仰の自由に関する権利の特別報告者の任期更新がある。ー健康に関する特別報告者の地位について、同性愛や中絶問題、彼がジョグジャカルタ原則に署名していることに関して、また適切な住居に関する特別報告者の、事前に対策を考えた見解が、「議論の余地のある」問題と見なされ、いくつかの国、特にエジプトから批判があったにもかかわらず[、任期は更新された]。
その他任期を更新された特別報告者は、以下の通り。
詳細レポートは、ISHRのCouncil Monitorを参照:
http://www.ishr.ch/hrm/council/index.html?
可能な限りの水準の身体的・精神的健康に対する権利[の特別報告者任期更新問題]
可能な限りの水準の身体的・精神的健康に対する権利に関する[特別報告者の任期を更新する]決議案は、この問題の伝統的な引受人であるブラジルによって提起された。これは、いつもややきわどい任期更新となってきた。特別報告者ポール・ハントの意を汲んで快諾するということは、セクシュアリティと生殖の権利(sexual and reproductive rights)について、権限委託をするか否かという含意が求められることになるからだ。
確かに、ブラジルにより作製された非公式的な状況報告によると、エジプトは、特別報告者が特にイラクとパレスチナに対して取っている姿勢に関して敬意を示しつつも、彼が母体の健康上の理由によるのではない中絶(non-therapeutic abortion)と同性愛を支持していることに、ジョグジャカルタ原則に署名したことも含めて、真っ向から異議を唱えた。エジプトは、母体の健康上の理由によるのではない中絶を、報告者権限の対照から明白に排除すべしという、任期更新決議案に対する修正を迫った。
これに答えて、ポール・ハントは、中絶に対する彼の見解は、カイロ会議[1994年]と北京会議[1995年]の国際スタンダードに準じたものであること、そして、「人権法を発展させる偏見のない考察」の上で、性的指向は国際法において禁じられる差別の条件を構成しているというのが、自身の熟慮の上での主張である、と言明した。
彼は加えて、10年前、女性の性器切除は、「文化的感覚」に属する問題だ、と考えられていたが、現在では健康に対する権利と矛盾すると広く見なされている、恐らく将来には同性愛に対する認識にも同様の変化が起きるであろう、と述べた。
同じようなことが、任期更新の議論の最中、総会で持ち上がった。ポルトガルがEUのために特別報告者を招き、人権と「性と生殖の健康や個人の性的指向の独立といった伝統的にデリケートな分野」との関係についてコメントを求めた。エジプトは、ただちにジョグジャカルタ原則から「性的指向」の定義を引用し、ポール・ハントが個人的にではなく専門家としてこの原則を擁護したことに異議を唱えた。エジプトは、「前回」何が起きたか、同性愛に関する決議案を、「これらの価値は多くの社会で認められており、我々はこの決議案に反対しない」と承認しつつ、通過させようとする試みが4年前に行われたということを、理事会に思い出させた。アルジェリアは、それが性と生殖の健康に照らして適切であっても、EUの声明の同性愛を扱う部分に賛成するのは「あまり確かな」ことではない、と指摘した。
[※「前回」「4年前」のこととは、2003年第60回国連人権委員会でブラジルにより提起された、国連初の「性的指向と人権」決議案を指していると思われる。以下参照:
アムネスティ発表国際ニュース(2003年04月22日)ー国連人権委員会:性的指向の決議案で人権の普遍性の危機
MILKメールマガジンvol.70 2003/05/22ー【国際】 国連・同性愛差別禁止決議案がイスラム教国によって阻止される]
特別報告者の任期更新およびこの分野での活動に、Action Canada for Population and DevelopmentおよびISHRは、アムネスティ・インターナショナルとCanadian HIV/AIDS Legal
Networkとともに、賛意を示した。
これに答えて、ポール・ハントは、自身の中絶に対する立場は、1994年のカイロ会議と1995年の北京会議で国連システムにより採用されたものと矛盾せず、自身の「性的指向を理由とした差別の不法性に対する見解は、私の同僚である多数の国連特別報告者および高等弁務官と一致している」と、あらためて強調した。
この決議は、特別報告者に、彼/彼女の職務の履行において、「その職務にジェンダーの視点を取り入れ、子どもや可傷的・周縁的な人々の必要に特別な注意を払って、すべての人間の可能なかぎりの身体的・精神的健康に対する権利を実現する」、そして「すべての人間の可能なかぎりの身体的・精神的健康に対する権利に不可欠な要素として、性と生殖の健康に関心を払い続ける」勇気を与える。「性と生殖の健康)」への配慮は、性の権利を関するイニシアティヴが行った、非常に効果的なロビー活動の直接的な結果であった。エジプトは、結局、健康上の理由によるのではない中絶に対する懸念された修正案を提起せず、任期更新の決議は多数一致で採用された。