グラスゴー大学「LGBTの人権をめぐるグローバル政治学」学会


今日11月16日(金)、グラスゴー大学 Department of Sociology, Anthropology and Applied Social Sciencesで、「LGBTの人権をめぐるグローバル政治学(The Global Politics of LGBT Human Rights)」という学会が開催されたそうだ。



The Global Politics of LGBT Human Rights
Friday 16 November 2007, University of Glasgow
Conference organizers: Dr. Kelly Kollman, Department of Politics; Dr. Matthew Waites,
Department of Sociology, Anthropology and Applied Social Sciences.


趣旨説明とプログラム(PDF)。
University of Glasgow - The Global Politics of LGBT Human Rights


ジョグジャカルタ原則の登場を準備した、近年の「LGBTの人権」をめぐる急速な国際政治の展開を、批判的に検証しようとするものらしい。
プログラムにはジョグジャカルタ原則に直接触れた発表はないが、ジョグジャカルタ原則を慎重に扱ってゆく上で示唆的な論・視点も出されているかもしれない。
参考に、プログラムの趣旨説明を(またいい加減だが)訳出しておこう。


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この学会は、研究者、NGO、アクティビストを一同に集め、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーLGBT)の人権に関するガバナンス、アクティビズム、言説に関する近年の世界、欧州、英国とスコットランドにおける展開を探究しようとするものです。本学会は、LGBTの人権に関する論争の歴史の重要な瞬間に開催されます。いま、国連、欧州の諸機関、各国政府がセクシュアリティジェンダー・マイノリティの権利要求に応えようと格闘しています。2006年だけでも、LGBT活動家は、LGBTの人権に関する国際学会で性的指向性自認に関する人権の要求としてモントリオール宣言を採択し*1、国連は数団体のLGBT団体に協議資格を与え、ノルウェイは国連人権理事会に「性的指向性自認を理由とする人権侵害」に反対する画期的な声明を出しました*2。2007年3月26日には、「性的指向性自認の問題に対する国際人権法の適用に関するジョグジャカルタ原則」が、国際的な人権専門家集団により刊行されました。同時に、同性愛と/またはトランスジェンダリズムをめぐり緊張した争いが、イラン、ロシア、ナイジェリア、ジャマイカなどの国々で発生しています。これと平行して、英国では、たとえばLGBT難民申請者をこれらのある国から、カトリックの養子縁組機関を通して?守るという努力が行われています。本学会の目的は、世界、欧州、英国スコットランドの間に広がる、政治的・社会学的・法的・政策的・日常的な人権の概念化を含めた、人権をめぐるさまざまな位相の言説の相互関係について、議論するフォーラムを開くことです。本学会では、[LGBTの人権問題の]発展を分析し、その根底にある社会政治的プロセスを識別するフォーラムが開かれます。


人権をめぐる言説は、過去20年間の間に、ジェンダーセクシュアリティをめぐり国際的な議論の中心となってきました。しかし、人権の普遍性は、比較社会学、人類学、フェミニズム政治学研究によって問題視されてきました。「性的解放」「平等」または「クィア」言説が、これらの運動の人権の枠組みに置き換えられることに反対したLGBTおよびクィア・ムーブメントのさまざまな要素も、同様に人権の普遍性を問題視しました。これらの批評の多くは、グローバルかつヨーロッパ的な人権をめぐる慣行と言説を吹き込もうとする西洋的文化認識を暴く社会・政治分析に、広く反響しています。


本学会の発表者たちは、「LGBTの人権」のグローバルな政治学に、社会理論的視点から説明と解釈を要する一個の経験的な問題として、また/あるいは政治活動の視点から取り組みます。ある発表は、「LGBTの人権」により何が意味されるのかを問い、人権をめぐる慣習や言説のヘテロノーマティブな要素を問題化します。いくつかのセッションは、「LGBTの人権」がいかにして現代のグローバルな政治に位置づけられるのかを考察し、規範や法的原則、活動家のネットワークが境界を越えて、国際的な組織の中でいかにして形作られるのかを調査します。スコットランドと英国のパネルでは、グローバルな展開と、国内での政治的プロセス、対話そしてジェンダーセクシュアリティについての社会認識の相関が議論されます。


本学会の発表は、以下の論点の1つまたは複数に焦点を当てています。

  • 「平等」そして/または「正義」のような概念よりむしろ「人権」に焦点を当てることにより、何が危うくなっているのか?
  • 社会学政治学および法社会学研究は、ジェンダーセクシュアリティについての人権の言説の変化の分析に、各々いかなる寄与をなしうるのか?
  • EU反差別政策への性的指向の包含のような、LGBTの人権に関するグローバルな政治の主要な展開は、社会政治学的な理論によりどのように説明しうるのか?
  • 人権NGOLGBTNGOは、性的指向性自認と人権に関する新たに勃興するグローバル政治をどのように形作り、あるいはそれにより形作られているのか?
  • スコットランド、英国そして西洋のLGBTや他の政治的ムーヴメント、組織は、世界の他の地域の人権をめぐる格闘にどのように応えてゆくべきなのか?
  • そして、スコットランドと英国における性的指向性自認に関する人権の要求のそれとの関わりは?

本大会で行われる発表は、編纂され出版されることになっています。
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