ILGA−ジョグジャカルタ原則国連公布式(11月7日)レポート〜ブラジルの活躍


「性的指向と性自認の問題に対する国際人権法の適用に関するジョグジャカルタ原則」]


1週間前に行われた、国連総会開催中のNY国連本部でのジョグジャカルタ原則公布式
主催諸団体からのレポートがなかなか出ず、やきもきしていたのですが(笑)、一昨日11月12日、主催団体の1つであるILGAのサイトに関連レポートが載りました。


ILGA – 12/11/2007 - U.N LAUNCH OF THE YOGYAKARTA PRINCIPLES IN NYC


ジョグジャカルタ原則は、国連本部でどのように受け止められたのか?公布式やパネルディスカッションにはどの国の関係者の参加が?どれほどの盛況だった?(もしかしたら全然盛り上がらなかった?)
ジョグジャカルタ原則にとって必要なのは、LGBT団体や人権団体の「すでに了解済み」な集団だけではなく、より一般的な注目、とりわけ国連諸機関、国連人権理事会理事国、各国政府・公的機関などの関心を惹きつけることでしょう。ですから、まず関心が湧くのは、そういう一般の反応です。


ILGAのレポートは、残念ながら、このような関心に応えるものではありません。
が、別の意味で、とても興味ある内容に思われます。


ジョグジャカルタ原則を普及させようとする各地での活動で、とりわけ目覚しい動きを見せているのが、ブラジルです。8月には4都市でジョグジャカルタ原則公布式が行われましたし、この国連公布式では、ブラジル政府がアルゼンチン、ウルグアイと一緒に共催を引き受ける−つまり、政府レベルでジョグジャカルタ原則支持を明示するという、快挙となりました。


ブラジルのLGBT権利状況−Wikipedia.en
首都サンパウロで世界最大規模のプライドが開催されるブラジルですが、同性愛を理由にしたヘイトクライムの発生率はまだ高く*1、全国レベルの同性婚・シビルユニオン制度もまだ持ちません。ここで明らかになったジョグジャカルタ原則への政府級の支持は、今後、ブラジルの性的少数者の環境を大きく変えてゆくかもしれません。


また、ジョグジャカルタ原則を世界に広めてゆこうとするグループにとって、政府レベルの支持に先鞭をつけてくれたブラジルには、いくら感謝してもし足りないでしょう。そもそも、以下のレポートでも触れられていますが、2003年、国連人権委員会(2006年より国連人権理事会)で、性的指向による人権侵害問題に関する史上初の決議案を他の賛同国とともに提出したのは、ブラジルでした。ILGAのジョグジャカルタ原則国連公布式のレポートが、ブラジル政府を動かしたブラジルのLGBT団体ABGLT(ブラジルGLBT連合)の活動への謝辞に近いものであるのは、当然かもしれません。
ブラジル、ラテンアメリカをフィールドとしたジョグジャカルタ原則普及の努力が、どのように進められてきたのかを伝える、貴重なレポートに思われます。


公布式の反響などは、他のレポートに期待するとして、ILGAのレポートを見てみましょう。
(訳は相変わらずアヤしいです特に組織機関名。レポートの内容に関連する情報や注は、順次追加してゆきます)



**************************
ニューヨーク市ジョグジャカルタ原則国連公布式
ブラジル、LGBTの権利のための国際的な戦いで前進
12/11/2007


2003年、ブラジルは国連人権委員会に、人権と性的指向に関する決議案を正式に提起した。これに対し、LGBT組織と人権活動組織の国際的な連携が、このイニシアティブを支持すべく行われた。


ブラジルは、経済的な課題を抱えていたことと、人権委員会理事国の支持が不十分だったために、2005年に決議案を撤回した。が、多くの活動が、ラテンアメリカで、他の国々を巻き込んで力を獲得すべく、取られ続けてきた。


同時に、より世界的な活動が、ネットワークを介して広がっていった。その中に、性的指向性自認についての問題に対する国際人権法の適用に関する重要なリソースであるジョグジャカルタ原則がある。


11月7日、ニューヨークの国連本部で、ブラジル政府は、アルゼンチン政府、ウルグアイ政府、そして以下のNGOARCインターナショナル(ARC International)、センター・フォー・ウィメンズ・グローバル・リーダーシップ(CWGL)、グローバル・ライツ(Global Rights)、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)、国際法律家委員会( International Commission of Jurists)、IGLHRC、ILGAとともに、ジョグジャカルタ原則の公布を行った。これは、市民社会が南半球の諸政府とのパートナーシップでコーディネイトした、1つの重要なアクションだ。


ABGLT(ブラジルGLBT連合)は、SOMOS(ポルトアレグロ)のAlexandre Boerと、ILGAラテンアメリカ・カリブの代表であるIEN (サン・パウロ)のBeto de Jesusによってコーディネイトされたメルコスール・プロジェクトでのそのLGBTの権利を通して、このイニシアティブへのブラジル政府の支持を繋いだ。それだけではなく、ジョグジャカルタ原則を国家刊行物としてポルトガル語で出版するために大統領執務室人権特別局(President’s Office Special Department for Human Rights)の支援もすでに取り付けている。インドネシアでの会議の共同議長を務めたABIA(ブラジルAIDS学際連合)とセクシュアリティ・ポリシー・ウォッチ(Sexuality Policy Watch)のSonia Correaとの共同で、ブラジルのリオデジャネイロ、ノヴァ・イグアス、ポルトアレグロサン・パウロで、地元NGOの参加によるジョグジャカルタ原則の公布式が行われた。


Beto de Jesuによると、「ブラジル政府によるイニシアティブは、8月にモンテビデオ[ウルグアイ]で開催されたメルコスールと共同国の人権に関する第9回高位権威者会議におけるジョグジャカルタ原則についての議論の、またABGLTのブラジル政府とのさまざまなレベルで結びついた働きの賜物だ」。


HRWのアドボカシー長Boris Dittrichは、8月末にブラジルを訪問し、ABGLTとILGAの支持で行うニューヨークでのジョグジャカルタ原則公布式を確実にするためにブラジル政府との取り決めを行った。


ABGLT議長のToni Reisは、「我々は極めて重要な瞬間にたどり着いています。ABGLTが、ブラジル国内で活動を行うと同じく、南世界で国際的に重要な役割を担っているのですから」


Beto de Jesus は、ジョグジャカルタ原則公布式と、国連NGO委員会の次期会議への戦略について、ブラジル議会国連代表と連携するために、今週ニューヨークにいる。次の会議では、ABGLTの国連経済社会理事会の協議資格申請が検討されるのである。この資格を得て、ABGLTは国連の活動に参加するとき自らの名前で発言する権利を持つことになる。


連絡先:
Beto de Jesus (11) 8452-3335 betojesus@uol.com.br
Toni Reis (41) 9602-8906 presidencia@abglt.org.br
*************************

*1:上掲のWikipediaによると、1980-2006年の26年間、ヘイトクライムで殺害された犠牲者は2,680人。